インバスケット体験 解説

Podcastで聴く[ドラマ編][解説編]

インバスケット思考には、絶対的な正解はありません。自分が考えた対応を踏まえながら、この解説を読み、今後のあなた自身の判断や行動の参考にしてください。

案件1

年の瀬なのに最新ダイニングセット2000台の注文。でもこれを受注すれば今年のノルマはクリアできる。

注文を宝くじが当たったかのようにとらえている大西君ですが・・・。

「2000個の商品手配」に焦点をあてるのではなく、「なぜ2000個も必要なのか」に焦点をあて、問題発見ができるかがポイント。 「月に2、3台しか注文がない取引先から、突然2000台もの注文」これを単純にラッキーととるか、“何かおかしい”と捉えられるかです。

そして、インバスケット思考では、判断の前に“その2000台はどのように使われるのか”“本当に2000台必要なのか”といった視点での情報収集をします。 目先の利益だけを追求するのではなく、“どういうリスクがあるのか”という長期的なものの見方が大切なのです。

案件2、3、4

上司からのコピーの命令。 コピーカードは後輩から借りたまま見つからない。 総務課から新年会の出欠催促メール。

案件2、3、4について、 この時間内に全てをしようとするのではなく、何を優先するのかで考えていきます。 インバスケット思考では、たくさんの案件の中から、どの案件から先に処理していくかの判断をします。これを優先順位設定といいます。

案件3の上司からのコピーの命令に対して、まず考えなければならないのは、“自分がしなければいけない作業なのか”ということです。 このケースでは、必ずしも自分でしなければいけないということではありません。

しかし、頭では分かっていても、“自分ですればすぐ済む”“頼むのが面倒”などの理由から、自分でやってしまう人も多いのではないでしょうか。

自分で何でもやろうとすると、他の本当に優先すべき案件が処理できなくなります。インバスケット思考では、本来の自分がするべきことを見失わないように、すべてしなければいけないという気持ちを捨てます。

特に、大西君はコピーカードをなくしていますしね。

優先順位を設定する際に、軸となるポイントは二つあります。 一つは「緊急度」です。締切などの時間の制限に基づいたものです。

このケースでも、すぐにしてくださいと時間が迫っていますね。そのため、すぐにしなければいけないと思うのですが、 もう一つの軸、「重要度」についても考えなければなりません。

重要度とは、この案件をしないとどのような影響が出るのかということです。 相手は誰なのか、お客様なのか、社内の部署なのか、などで影響は変わっていくものです。 この重要度というポイントを視点に入れることで、優先順位の設定の仕方は変わってきます。 つい緊急度に気を取られがちですが、インバスケット思考では重要度を強く意識します。

このケースの場合では、重要度がそれほど高いわけでもないので、後輩に明確な指示をして、上司に報告すればよいのではないでしょうか。

案件5

親会社の倒産情報。

マークホームセンターの親会社であるマーク産業の倒産と2000台の注文が来たことを関連づけて判断できるかがポイントです。 インバスケット思考では、1つの問題を捉えるのではなく、流れと関連性を考えて判断を行うことが大切。

このケースでは、「親会社が倒産した会社から2000台の注文が来た」と関連づけられます。

また、マークホームセンターに行った部下、横田からの「あんまり変わりがなかった」という情報についてですが、この“あまり”というところに注目してください。

情報には、定性情報と定量情報という2つ種類があります。 例えば、“あんまり”や“すぐ”というのは、定性情報と言われるもので、簡単に言うと、主観的な情報のことです。これを基に重要な判断を行うのは、危ないことです。

定例情報とは客観的な情報のことです。 インバスケット思考では、定量情報を重視して判断を行います。

このケースでは、“本当に普段通り営業していたのか”や“商品がきちんと仕入れられていたのか”など、もっと定量的な情報を取るべきです。質問の仕方によって、返ってくる情報は変わってきます。

【まとめ】

インバスケット思考では、すべてを処理しようとするのではなく、優先順位を設定していきます。 このケースであれば、 ・上司からのコピー ・総務課からの出欠確認のメール こういったものは、切り捨ててもよいでしょう。

どれか1つだけ処理するのであれば、どれなのか。 という観点で考えると、 2000台の受注作業をする前に、親会社が倒産したマークホームセンターは、本当に大丈夫なのかの情報収集をしたいところです。

このケースのように、ビジネスシーンでは、限られた時間の中、数少ない情報で、判断をしていかなければなりません。 そこで、みなさんの役に立ってくれるのが、“インバスケット思考”です。 身につけることで、仕事の成果が上がり、時間に余裕も出てくるでしょう。

より詳しい“インバスケット思考”については、『究極の判断力を身につけるインバスケット思考』『入社2年目のインバスケット思考』を、ぜひお読みください。

著者 鳥原隆志(とりはら・たかし)プロフィール

株式会社インバスケット研究所 代表取締役
インバスケット・コンサルタント
大手流通業にて、さまざまな販売部門を経験し、スーパーバイザー(店舗指導員)として店舗指導や問題解決業務に従事する。
昇格試験時にインバスケットに出合い、トレーニングと研究を開始する。その経験を活かし、株式会社インバスケット研究所を設立。
これまでに作成したインバスケット問題は、ゆうに腰の高さを超える。現在、日本で唯一のインバスケット・コンサルタントとして活躍中。著書に『究極の判断力を身につけるインバスケット思考』(WAVE出版)などがある。

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