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日本の時代をつくった本

日本の時代をつくった本 日本の時代をつくった本
発行年月 2017年4月刊行
価格 定価 9,900円(税込)
判型 A4判
装丁 上製
ページ数 320ページ
ISBN 978-4-86621-040-7
内容紹介

近代から現代にいたるまで、
日本の出版文化を通史的に解説した、初めての図鑑!

幅允孝(BACH代表)、植田康夫(上智大学名誉教授)推薦!

①写真や図解でわかりやすく 紹介作品の写真の書影や紙面の写真をはじめ、当時の世相や社会状況、時代背景がわかるビジュアル資料をフルカラーで多数掲載。

②社会背景から作品を解説 明治以降、1年ごとに代表的な書籍や雑誌をとりあげ、社会背景からベストセラーになった理由を読み解きます。多岐にわたる作品を紹介、解説しています。

③出版社・人物事典 コラムでは、代表的な日本の出版社や出版人を紹介します。また、出版業界に大きな影響を与えたシステムや技術の変遷についても解説します。

推薦の言葉)
時代の空気が一冊の本を生むこともあれば、一つの雑誌が世の中を変えることもあります。本書は明治から現代までの150年間を、一冊の本、一つの雑誌に
注目して振り返る画期的な図鑑です。──永江 朗

1年ごとに刻まれた本の歩みを知ることによって、書き手同士の相関や時代の熱やうねりを感じることができる。検索型の世の中だからこそ、小さな点ではなく自分なりの輪郭をもとに本の地図を描きたい。そんな人には、うってつけの本だと思えます。──BACH代表・ブックディレクター 幅 允孝

近代以降150年にわたる日本の出版史に多角的な照明を当て、文化・思想史としても優れた本である。各時代を代表する出版物や時代を表す風景・出来事を写真や図解で示し、視覚的に出版史を理解できるのはありがたい。──上智大学名誉教授・株式会社読書人顧問 植田康夫

目次

序章
出版を通して教養が庶民層へと浸透
和歌、短歌の大衆化
木版本と流通システム
幕末混乱期の出版 など

第一章 明治時代
自由精神を鼓舞して青年を導いた「明治の聖書」―S・スマイルス『西国立志編』
文明への信頼と渇望が生んだ啓蒙思想の頂点―福沢諭吉『学問のすすめ』
学会誌の先駆けとなった学術総合雑誌―『明六雑誌』
日本文明の歴史的変遷をたどった啓蒙史学の傑作―田口卯吉『日本開化小史』
民権思想普及を支えた―植木枝盛『民権自由論』
明治の翻訳ブーム―J・ヴェルヌ『八十日間世界一周』
平成までつながる「毒婦」ものの系譜―仮名垣魯文『高橋阿伝夜叉譚』
立憲改進党の理想が描かれた政治小説―矢野龍渓『経国美談』
元会津藩士が描いた弱小民族の悲史―東海散士『佳人之奇遇』
明治最初の啓蒙的な文芸批評体系―坪内逍遥『小説神髄』
明治20代の日本から将来を展望した予言的な書―中江兆民『三酔人経綸問答』
史上初の言文一致体で書かれたリアリズム小説―二葉亭四迷『浮雲』
維新後の青年が進むべき進路を示した出世作―徳富蘇峰『新日本の青年』
のちに大正デモクラシー時代の言論をリード―『中央公論』
日本最初の翻訳ミステリー―黒岩涙香『法廷の美人』
最初の本格的な文学論争を引き起こす―森鴎外『舞姫』
明治中期のナショナリズムの代表作―三宅雪嶺『真善美日本人』
ゴシップ報道の先駆者―『萬朝報』
露伴の理想主義を込めた明治文学の金字塔―幸田露伴『五重塔』
明治の青年が直面した西洋思想との格闘―内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりしか』
封建制度化の女性の閉塞と苦悩―樋口一葉『たけくらべ』
「女学生」ブームを巻き起こした恋愛小説―小杉天外『魔風恋風』
近代資本主義社会の愛と黄金の争い―尾崎紅葉『金色夜叉』
「武蔵野」のイメージをつくりあげた随筆の傑作―国木田独歩『武蔵野』
初めて労働者の立場から描かれた労働の実態―横山源之助『日本の下層社会』
日清戦争後の社会を描くモデル小説―徳富蘆花『不如帰』
浪漫主義にもとづき短歌の革新に貢献―『明星』
レーニンに先駆けて書かれた近代帝国主義への反論―幸徳秋水『二十世紀の怪物帝国主義』
近代短歌を開花させた記念碑的歌集―与謝野晶子『みだれ髪』
近代日本で書かれた病床随筆の傑作―正岡子規『病状六尺』
西洋化の中で日本美術を再評価―岡倉天心『東洋の理想』
猫の目から明治を綴った夏目漱石の処女小説―夏目漱石『吾輩は猫である』
部落差別の先駆的に描いた自然主義文学の代表作―島崎藤村『破戒』
劇化され新派の名作となった―泉鏡花『婦系図』
足尾銅山鉱毒問題の経緯を書いた公害告発の原点―荒畑寒村『谷中村滅亡史』
昭和まで続く少女雑誌の先駆け―『少女の友』
日本思想の精髄を説いた日本文化論―新渡戸稲造『武士道』
明治の「煩悶青年」を描いた傑作―森鴎外『青年』
近代を批判した江戸回帰小説の傑作―永井荷風『すみだ川』
近代の歴史の中で忘れ去られた日本の生活―柳田國男『遠野物語』
日本で生まれた独創的哲学体系―西田幾多郎『善の研究』

第2章 大正時代
フェミニズムの元祖、若い太陽たちの雑誌―『青鞜』
書かれた「新しい女」―有島武郎『或る女』
「詩的近代」の最初の傑作―高村光太郎『道程』
近代文学の最高峰―志賀直哉『暗夜行路』
大衆小説の先駆けとなった大長編小説―中里介山『大菩薩峠』
爆発的ブームを読んだ「書き講談」―立川文庫『猿飛佐助』
転換期に「明治の精神」が経験してきた倫理的危機を見つめる―夏目漱石『こころ』
大正デモクラシー運動を先導した論文―吉野作造『憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず』
原始的欲望の積極的肯定と挫折―倉田百三『出家とその弟子』
第一次大戦の戦時景気に浮かれる日本に「貧乏問題」を提起―河上肇『貧乏物語』
打ち捨てられていた日本の古美術に光を当てた傑作―和辻哲郎『古寺巡礼』
戦前の天皇制の時流に抗した古典の批判的研究―津田左右吉『古事記及び日本書紀の研究』
日本資本主義の発展を支えて女工の実態―細井和喜蔵『女工哀史』
忘れられた文学青年のカリスマ―島田清次郎『地上』
文壇の寵児が創刊した「国民雑誌」―『文藝春秋』
近代の日本が生んだ農民詩人の悲しみ―宮沢賢治『春と修羅』

第3章 昭和前期
作者の経験に取材した日本プロレタリア文学の傑作―葉山嘉樹『海に生くる人々』
芥川最晩年の遺書的作品―芥川龍之介『或る阿呆の一生』
国際都市上海を描いた、新感覚派文学を代表する先駆的都会小説―横光利一『上海』
北洋航船蟹漁に従事する労働者の苦境を描く―小林多喜二『蟹工船』
日本の美意識「いき(粋)」を分析した哲学の名著―九鬼周造『いきの構造』
太平洋戦争下の人心に呼応した、新聞小説史上最大の人気作―吉川英治『宮本武蔵』
戦時下日本を痛烈に批判した「抵抗詩集」―金子光晴『鮫』
ベストセラーになった転向小説─島木健作『生活の探求』
軍報道部員としての経験を綴った戦争文学の傑作―火野葦平『麦と兵隊』
サナトリウムを舞台にした純愛小説―堀辰夫『風立ちぬ』
明治以降の西欧的近代は超えることができるのか―知的協力会議編『近代の超克』
戦争と近代化で失われていく生活の美しさ―谷崎潤一郎『細雪』

第4章 昭和後期
個人主義的な天皇制下の秩序解体を説く―坂口安吾『堕落論』
原爆体験を写実的に描いた原爆文学の傑作―原民喜『夏の花』
没落していく上流階級を描く―太宰治『斜陽』
戦後ストーリー漫画の原点―手塚治虫『新寶島』
生を奪われた学徒兵の慟哭―日本戦没学生記念会編『きけわだつみのこえ』
どん底の時代に美しい暮らしを提案―『暮らしの手帖』
日本の美を追求した傑作―川端康成『雪国』
戦後の平和を徳川家康の欲した「泰平」に重ね合わせた―山岡荘八『徳川家康』
人間の極地を描いた戦争文学―大岡昇平『野火』
数々のベストセラーを生み出した大衆向け教養新書―カッパブックス
神武景気のなか描かれた戦後派青年―石原慎太郎『太陽の季節』
戦後派文学の金字塔―三島由紀夫『金閣寺』
社会派推理小説を代表する作品―松本清張『点と線』
戦後日本の閉塞感と恐怖―大江健三郎『飼育』
「一枚の絵は一万字にまさる」。マンガ週刊誌の草分け―『少年マガジン』
敗戦国として再出発した日本の幸福―小田実『何でもみてやろう』
顧みられなかった日本人の生活を歴史の舞台へ―宮本常一『忘れられた日本人』
竜馬像を作った司馬文学の代表作―司馬遼太郎『竜馬がゆく』
1964年、高度成長期の真っ最中に創刊―『平凡パンチ』
大河ドラマによって一躍ベストセラーに―海音寺潮五郎『天と地と』
世界中で愛される絵本のベストセラー―中川李枝子(作)山脇百合子(絵)『ぐりとぐら』
新しい世界観を提示した独自の国家論―吉本隆明『共同幻想論』
水俣病を人間の側から描いた公害問題の原点―石牟礼道子『苦海浄土』
「アンノン族」を生み出した女性ファッション誌の老舗―『nonno』
農村を舞台に因習と葛藤を織り込んだ推理小説―横溝正史『八つ墓村』
いちはやく認知章と高齢者介護を描いた―有吉佐和子『恍惚の人』
高度経済成長後の社会へのアンチテーゼと災害への不安―小松左京『日本沈没』

第5章 平成
五木寛之の〝創訳〞で若者たちの心をとらえた寓話―R・バック『かもめのジョナサン』
自閉状況の打破を目指した青春小説―村上龍『限りなく透明に近いブルー』
「ありのまま」で生きることの衝撃―黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』
「女らしさ」「男らしさ」を解き明かすフェミニズムの代表作―上野千鶴子『セクシィギャルの大研究』
ナイーブで孤独な若者の魂の日々―島田雅彦『優しいサヨクのための嬉遊曲』
女と男の自由で自然な関係―山田詠美『ベッドタイムアイズ』
新しい現代短歌の先駆け―俵万智『サラダ記念日』
現代を「フツー」に切り取った新しさ―吉本ばなな『キッチン』
現代の都市に隠された民話的世界―多和田葉子『犬婿入り』
発行部数のギネス記録を樹立―『少年ジャンプ』
地下鉄サリン事件の衝撃―村上春樹『アンダーグラウンド』
大人も夢中になった児童文学―J・K・ローリング『ハリーポッターと賢者の石』
学校とは違う、「考えて、知る」ための教科書―池田晶子『14歳からの哲学』
新書ブームをけん引したベストセラー―養老孟司『バカの壁』
ネット上の小説を書籍化―「ケータイ小説」
史上空前の売れ行きを記録―村上春樹『1Q84』
進化し続ける新しいメディア―電子書籍

著者紹介

永江 朗(ながえ あきら)

1958年北海道生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。
西武百貨店系の洋書店「アール・ヴィヴァン」に約7年間勤務した後、『宝島』などの編集を経てフリーライターに。「哲学からアダルトまで」幅広いジャンルで活躍する。とりわけ書店流通には造詣が深い。
著書に「51歳からの読書術─ほんとうの読書は中年を過ぎてから」(六耀社)、「『本が売れない』というけれど」(ポプラ新書)等多数。